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ロサ博士に学ぶバラ講座
助手のバーバラと一緒にバラの起源や歴史など、
ロサ博士に学んでみましょう!
回を重ねるごとに、あなたもきっと「バラ博士」!?
プロフィール

- ロサ博士
- ローズ(ROSE)のラテン語読みロサ(ROSA)を名前に持つ、文字通りのバラ博士。バラの研究に心血をそそぎ、三度の食事よりバラが好き。その興味は、バラの育て方からおいしいローズティーの入れ方、はたまたバラの遺伝子レベルの解明など幅広い。

- バーバラ助手
- 最近ロサ博士の助手になったばかり。過去何度もバラを育てては枯らしている。好奇心が旺盛で、いつも博士に質問してばかりしているが、ときどき博士に紅茶とお菓子のサービスも忘れない愛嬌者。
第2回 「バラの起源を探る」〜バラはアジアの出身!?
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久しぶりの講義ですね。楽しみです。 |
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復習をかねて、1回目の講義の内容をおさらいするよ。 まず、質問。バラ属の種類はどれくらいあるのだったかな? |
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確か…100種類くらいはあるんじゃないかしら。 |
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お!しっかり復習をしてきた様子だね。そのとおりだよ。バラ属には100〜200種のバラがあるといわれている。しかし、そのうち現代バラ、つまりモダン・ローズの先祖となっているのは、10種程度といわれている。 |
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意外に少ないですね。 |
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そう思うかもしれないね。10種程度のバラから、さまざまなモダン・ローズが生まれたということは、驚きかもしれないね。 |
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「種」というのは、なにかしら? |
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ちょっと難しいけれど、考えておかなければならないね。生物学では自由に交配できる単位と言われている。当然同じ種の中では様々な性質、たとえば花の色や形などがよく似ていて、他の種と区別される。植物の場合には自由に動けないので、生存している場所が離れていれば交配できないために、長い時間の後に別の種に分かれることもある。また同じ場所に咲いていても、開花時期が違えばやはり交配できないために別の種が維持されるだろうね。 |
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それではどうして種間の交配で新しい品種(雑種)ができるのかしら? |
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どんどん難しくなりそうだね。DNAはわかるよね? |
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これが親から子に伝わって、子が親に似るのでしたよね。 |
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そうだね。このDNAは時間が経つと、とてもゆっくりだけれど変化する。それでも、余りにも長い時間がたつと違いが大きくなり過ぎて、交配して雑種ができても繁殖力のある子孫ができなくなる。もっと時間が経てば雑種すらできなくなる。バラでは、種が分かれてから余り時間が経っていないのだろうね。 地理的に離れていたり、時期的にずれて咲いているために、自然状態では交雑しないバラも、DNAの違いがあまり大きくないために、人工的に交配すると割と容易に繁殖力のある雑種ができるのだろうね。 ![]() チグリス フルセミア亜属とユーローザ亜属の交配で生まれたチグリス。花の中央部が赤くなる以外にも葉などもユーローザのバラとは異なる |
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つまり、同じ亜属内だけではなく、亜属間でも種間の人工交雑が可能であるということは、自然状態でも気候変動やさまざまな偶然が重なって、種間の交雑が起こったと考えられますよね? |
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「ロサ・ガリカ」の起源は、いまだ不明なのですね。 |
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その話は、のちほど違う観点から説明するよ。 さきほどのDNAの変化の話に戻すと、北アメリカには、「カロリナエ節」と呼ばれるグループのバラがあるけれど、DNA分析では、種間でほとんど違いを見つけることはできない。 カロリナエ節のバラ ![]() ![]() ![]() |
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DNAで違いがないと、見た目はどうなのですか? |
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いいところに気がついたね!見た目は、バラの育つ環境変化に応じて変化して、別の種名を与えられるほどに違っている。逆に、同じ環境で長い時間育っていれば、見た目は違わないけれど、DNAで見ると随分違いが大きいこともあるのだよ。 |
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なんだか混乱しそう…。 つまり、見た目が違ってもDNAにそれほど違いがない場合と、見た目は似ているけれども、DNAには大きな違いがある場合がある、ということですね?それは、DNAが時間に応じて変化するのに対して、形は環境に応じて変化するためにこんな事が起きるのですね? |
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そのとおり。ところで、ここでまたひとつ質問をしよう。バラの出身地はどこだと思う?イメージで答えてくれてもかまわない。 |
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やっぱりヨーロッパだと思います。 |
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そう思うかね。それでは、答えよう。実は栽培バラの基になったバラのほとんどは中東からアジアにかけてのバラなんだ。 |
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えぇっ!アジアの植物なの? |
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栽培バラの多くはアジアの植物で、アジアから進出して世界各地で広まった。でも、確かにバラはヨーロッパの植物であると思っている人は多いね。 |
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前回の講義では、紀元前三千年前のシュメール遺跡からバラをかたどった像が発見されたり、エジプトのピラミッドから発見されたり…とかなり古くから存在していたことはわかりました。でも、いったいどのあたりが起源なのかしら? |
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なるほど。でも、どのようにしてアジアからヨーロッパへ広がっていったのかしら?もう少し具体的にいえば… |
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![]() そして、この図は現在の分布域だけれど、その一種「ロサ・ブルノニ(※)は、30万年ほど前、中国西南部からヒマラヤ山脈の南を通ってパキスタン北部まで広がり、天山山脈から南下してきた中央アジアの「ロサ・フェドチェンコアナ」と現在のパキスタン、アフガニスタン北部で出会い、雑種が生まれたと推測している。 ※ロサ・ブルノニ 正式の植物学上の名前は「ロサ・モスカータ・ネパレンシス」。先に発見されたものを基本種とするという命名方法のためにヨーロッパのロサ・モスカータが基本種となっている。以下に述べる様にヨーロッパのロサ・モスカータはその発生地と考えられている所から遠く離れており、雑種と解釈できるDNAの証拠があるので栽培品種と考えあえてロサ・ブルノニとした。 ![]() ![]() |
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…複雑です。 |
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西へ西へと広がっていた「ロサ・ブルノニ」と「ロサ・フェドチェンコアナ」の雑種は、黒海周辺で「ロサ・ガリカ」と出会い、結果「ダマスク・ローズ」が生まれた。その後、「ガリカ」「ダマスク・ローズ」を中心にして、ヨーロッパのオールド・ローズができあがった。 一方、「ロサ・ブルノニ」と「ロサ・フェドチェンコアナ」の雑種の一部は、「ロサ・ブルノニ」と交雑を繰り返し、見た目は「ロサ・ブルノニ」に近く、「ロサ・フェドチェンコアナ」からは、秋にもポチポチ咲くような性質等を受け継いだ。そんなバラが珍しさから選抜され、栽培されるようになった。それが、いわゆるロサ・モスカータではないかと考えている。 |
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ようやくつながりましたね!アジアとヨーロッパが。 |
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一方で、「ロサ・ブルノニ」と「ロサ・フェドチェンコアナ」との交雑種は、ヨーロッパ自生のさまざまなバラと交雑し、ヨーロッパのシンスティラエ節のバラが生まれたと考えている。ここまでが第1ステージだね。 |
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知れば知るほど、興味が湧いてきますね。 |
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それはよかった!バラの世界は奥が深いからね。第2ステージは、中国の四季咲きの園芸品種の導入によって始まる。中国では、古くからバラが栽培されてきたけれど、宋代の始め頃(10世紀頃)までには、四季咲き品種が作られるようになっていた。その後18世紀には中国の園芸品種がヨーロッパに導入されて、「ガリカ」「ダマスク」「アルバ」「センティフォリア」などのヨーロッパのオールド・ローズと交配され、四季咲きのモダン・ローズが誕生したんだ。 |
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いわゆる、バラの歴史的革命の年、1867年のモダン・ローズ誕生の年ですね! |
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一般的にそう言われているね。しかし、モダン・ローズの誕生は、1867年だけに何か事件が起こったというわけではなく、数十年も、交雑が繰り返された結果の出来事であるということが、今日の講義でも理解してもらえたと思う。 |
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壮大な歴史スペクタクルですね! |
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ほっほほ。それでは、今回はこの辺で終わりにしよう。長い講座、おつかれさま。よく頑張ったね。次回のテーマは、オールド・ローズだよ。もっと詳しく見ていくから、復習を忘れないようにね。 |
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まかせてください! 博士、頭を使ってお腹がすいたので、ケーキを食べませんか?昨日ローズケーキづくりに挑戦したんです。 |
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…お腹をこわさなきゃいいけれど!? |