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四季の花ものがたり
ハナショウブ
すらりと伸びた茎に、紫の花が美しく映える花菖蒲(ハナショウブ)。
しっとりとした日本情緒を感じさせてくれますね。
野生種のノハナショウブが原種で、
古代より鑑賞用に改良が重ねられました。
江戸時代から本格的に改良され、
江戸系、肥後系、伊勢系と3つの品種群に分かれ、
現存する品種は2,000以上といわれます。
端午の節句に、飾ったり菖蒲湯にして楽しむ「ショウブ」と
しばしば混同されますが、ショウブと花菖蒲は、
まったく別もの。ショウブはサトイモ科に属し、
蜜状の小さな黄色い花をたくさんつけるのに対し、
花菖蒲はアヤメ科に属します。
同じアヤメ科の仲間には、
「いずれあやめかかきつばた」と言われるように、
アヤメ、カキツバタと区別の難しい種類がありますが、
簡単な見分け方は、花びらの基のところの色や模様。
花菖蒲は黄色、カキツバタは白、
アヤメは網目状の模様がそれぞれあります。
ところで、ここで花菖蒲を詠んだ歌を
ひとつご紹介しましょう。
「さみだれに 沼の石垣 水こえて
いずれがあやめ 引きぞわづらう」
これは、『源平盛衰記』の鵺(ぬえ/妖怪)退治で名を馳せ、
歌人としても有名な源三位頼政が詠んだ歌で、
「どれも優れていて選択に迷う」ことを言っています。
当時は「ショウブ」「花菖蒲」ともに「あやめ」と呼ばれ、
たいへん紛らわしかったことから、
「いずれがあやめ」という表現が流行していました。
この歌はその表現をうまく利用したもので、
詠まれた背景は、こんなエピソードがあります。
頼政は、鳥羽院寵愛の宮中一の美女、
あやめ御前に想いを募らせていましたが、
やがてこれは院の知るところとなりました。
5月5日の夕暮れ、院は頼政を呼びつけ、
あやめ御前と、ほかによく似た女性二人に同じ姿をさせ、
「みごと当てたらあやめをゆずろう」と難題を出しました。
そこで困った頼政が、詠んだのが前記の歌だったのです。
この巧みさに感服した鳥羽院は自らあやめ御前の手を取り、
頼政に賜ったと記されています。
花言葉は、「やさしい心」「優雅な心」など