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ニンニクの化学

非栄養性機能物質

動物はその生命の維持等のため、食物を通じ三大栄養素(タンパク質・脂質・糖質(炭水化物))と微量栄養素(ビタミン、ミネラルなど)という栄養素を取り入れなければなりません。食物にはこれらの栄養素と異なるさまざまな生物活性を示す物質があり、これらを非栄養性機能物質と呼びます。例えば生薬やハーブは、植物中の栄養成分とは異なる成分(非栄養性機能物質)に、薬物として働く作用を期待して利用しています。ニンニクには、アリイン、メチイン、シクロアリインと呼ばれる含硫アミノ酸や、ガンマ-グルタミル-S-アリルシステイン、ガンマ-グルタミル-S-1-プロペニルシステインと呼ばれるペプチド、そしてフロスタノールサポニンとよばれるステロイド系化合物と糖の複合物質があります。これらは、タンパク質となったりエネルギーを産生させたりすることに直接関与しませんが、生物中の成分と作用しあうことでさまざまな生理活性を発揮します。

臭いの素となる成分

ニンニクを傷つけたりした後に、特徴的な臭いを作り出す素となる化合物は、主にアリインとメチインと呼ばれるイオウを含むアミノ酸の1種です。このアミノ酸はシステインの誘導体で揮発性は無く、極めて水によく溶ける親水性の性質をもっています。このアミノ酸類が酵素アリイナーゼによってアリルスルフェン酸とアミノアクリル酸に分解されます。アリルスルフェン酸は極めて反応性の高い化合物で、2つの分子の間で脱水反応と呼ばれる反応により、速やかに最初の臭い物質アリシンに変換されます。アリシンは反応性が高いため、他の物質との反応や、自分自身で分解し他の物質に変換してしまい易い性質を持っています。この性質のため、一旦アリシンができると次々と化学反応が起こり、主に揮発性で脂溶性の化合物ができます。アリシンからできる脂溶性の化合物には、アリルスルフィド類、アリルメチルスルフィド類、ビニルジチイン、アホエンなどがあります。

アリルスルフィド類の中で代表的な化合物ジアリルジスルフィドは、アリシンの分解物アリルメルカプタンとアリルスルフェン酸が化学反応してでき、ジアリルジスルフィドは自己分解などを通じ、更にイオウの数が多いスルフィド類へと変換します。1分子のジアリルジスルフィドを作るためには、前駆体となる無臭化合物アリインが4分子必要となり、イオウの数が多いスルフィド化合物では更に多くの前駆体が必要となります。アリルメチルスルフィド類は、酵素反応により、メチインならびにアリインから生成したメチルスルフェン酸とアリルスルフェン酸の反応生成物、アリルメチルチオスルフィネートの分解によって生成します。

ビニルジチインは、アリシンが分解してできたチオアクロレインが2分子反応して生成します。1分子のチオアクロレインは、1分子のアリシンからできますので、ビニルジチインが1分子できるには2分子のアリシン、あるいは4分子のアリインが必要となります。ここで、ビニルジチインは2つの型があり、1,3-型と呼ばれる方がより優先的に生成します(1,3-型対1,2-型は生成比が約4:1という報告がされています)。

アホエンは、アリシンとアリシンから生成したアリルスルフェン酸が反応して生成します。アリシン2分子からアホエン1分子が生成する計算になりますので、アリインは4分子用いられたことになります。アホエンもE型とZ型と呼ばれる2つの型があり、EとZの生成比はおよそ12:1くらいとの報告があります。

これらの化合物の生成条件はそれぞれ異なっています。また、化学合成技術を用いた場合の収率もせいぜい数十%程度です。したがって実際に、ニンニクの加工・調理によってこれらの化合物含量の高い食品や食品素材を得るのは難しいでしょう。