


目はカメラのような構造をしていて、さまざまな物の色や形を光の情報として「角膜(黒目)」に送り込みます。次にカメラのしぼりの役割をする「虹彩(こうさい)」が、目の中央にあたる「瞳孔」を広げたり狭めたりして、目に入る光の量を調節します。光はレンズにあたる「水晶体」で屈折してピントが合い、フィルムにあたる「網膜」上で像を結びます。網膜上で像を結んだ光は電気信号に変えられて、「視神経」を経て脳へと伝えられ、はじめて物を見ることができるのです。目で見ている=脳で見ているということです。物を見るためにはどちらの機能もとても大切な役割を果たしています。

体は20代後半から成長機能が落ちてきて、個人差はありますが、40代に入るとさまざまな自覚症状が現れます。目に関しては平均すると45歳くらいから、「見えにくい」「目が疲れる」などの症状が現れてきます。これは一般的に「水晶体」の硬化が原因と考えられています。水晶体は、厚くなったり薄くなったりしてピントを合わせていますので、硬くなると変形しづらくなり、十分に機能しなくなってしまうのです。
中高年になると、本や雑誌などの近くの文字が読みづらいという症状が現れます。これはまず「老眼」が疑われますが、見えにくくなったときに疑われる病気はたくさんあります。目は患者さんが最も自覚しやすい臓器ですので、見え方に異常を感じた場合はなるべく早く眼科を受診するようにしてください。

中高年でもっとも多い目の病気は「白内障」です。80歳代の人のほとんどが白内障にかかっていると言われています。これは年齢とともに水晶体が白く濁る病気で、薄い膜がかかったようにかすんで見えたり、まぶしく見えるなどの症状が現れます。ただし、水晶体のどこの部分が濁るかで症状は変わってくるため、すべての人に視覚障害が起こるわけではありません。治療法としては点眼薬で進行を遅らせることができますが、症状が進んだ場合は濁った水晶体を取り除き、代わりのレンズを挿入する手術を行うのが一般的です。
次に多い病気は「緑内障」です。これは眼圧(眼球内の圧力)が高くなることで、視神経線維の障害が起こります。そして障害された個所に応じて、視野に見えない部分が生じます。日本では眼圧が正常な正常眼圧緑内障が多いことがわかっていますが、正常眼圧緑内障の人でも治療をせずにそのままにすると、障害が起こった視神経線維の範囲が広がり、最終的に失明することもあります。治療法は眼圧をさげる点眼がメインとなりますが、最終手段として手術を行う場合もあります。しかし、手術によりいったん眼圧が低下してもまた眼圧が上昇してしまうこともあるため、定期健診などで早期発見をして点眼による治療を受けることが効果的です。
3つめは「糖尿病網膜症」で「糖尿病」の合併症の一つです。血糖が高い状態が続くと、毛細血管を中心に障害が起こってきます。網膜には、目に必要な酸素と栄養を与える毛細血管が細かく張り巡らされているので、糖尿病の発症から長いと網膜の毛細血管が傷み、障害が進行していきます。この病気は、後期の段階まで見えづらいなどの自覚症状が出にくいため、気づいたときは症状がかなり進行している場合も多く、失明の危険性を伴います。治療は、糖尿病治療の基本である食事療法と薬物による血糖コントロールを行います。初期の場合は、これでかなり進行を抑えることが可能ですが、症状が進んだ場合はレーザー治療や硝子体手術を行いますが、思うように視力の低下を抑えることができないこともあります。まずは糖尿病と診断されたら定期的に眼底検査を受けることと、内科医の指示を良く守って糖尿病を悪化させないことが大切です。
健康で長生きするために目はとても重要です。40歳を過ぎたら目の健康管理として「眼圧検査」「眼底検査」などの検査を定期的に受け、早期発見、早期治療を心がけましょう。

本ページの記事は湧永製薬発行情報誌“大元気 春号”に好評掲載中です。
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