
![[統合失調症]](img/21/teach_top_sub.gif)

「統合失調症」は、幻覚や妄想などの症状により患者さんが困難や苦痛を感じ、日常生活に支障をきたす精神疾患です。自分の考えをまとめたり、気持ちの整理や周囲とのコミュニケーションが困難となるため、回復には治療や周りの援助が必要となります。
統合失調症は症状の特徴によって、主に「解体型」「緊張型」「妄想型」の3タイプに分けられます。今では、新しい薬など様々な治療法が開発されており、患者さんの多くは健康を取り戻し、元の生活水準にまで回復することができるようになりました。
脳内の神経伝達物質のバランスの乱れなどにより、脳の機能に異常をきたすことが発症の原因ではないかといわれています。

統合失調症の症状は、大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つに分けられます。
陽性症状とは、主に幻覚や妄想などの症状です。実際に起こっていない現象を現実的な感覚として感じる症状が”幻覚 “ですが、その中で最も多いのが「幻聴」です。
聞こえていない声に反応して笑う、会話するなど、周囲の人には理解しづらい行動を起こすこともあります。
妄想とは、間違っているにもかかわらず、それが正しいと強く確信してしまうことです。「町ですれ違う人はみんな敵だ」「自分は尾行されている」などの被害妄想が代表的で、「自分には世界を動かす力がある」といった誇大妄想が現れるケースもあります。
陰性症状とは、感情の平板化(感情鈍麻)、意欲低下、自閉などの症状のことです。「自分の殻に閉じこもる」「喜怒哀楽の表現が乏しくなる」などの症状が現れ、その場に見合った会話や行動ができにくくなります。陽性症状と比べて患者さんの異変が分かりづらく、本人も上手く説明できないケースが多いため、周囲からは「社会性がない」「怠けている」と誤解を受けてしまうこともあります。
認知機能障害とは、記憶力、注意力や集中力の低下、また優先順位をつけたり計画を立てたりする判断力の低下などの症状をさします。
統合失調症は、病気の経過により「前兆期」「急性期」「休息期(消耗期)」「回復期」に分けられます。
前兆期は不眠やいらいらなど、「何か変だな」と感じる時期。ここで治療を始めると、効果が高いといわれています。急性期には、陽性症状が強く現れるので、できるだけ早く専門機関を受診することが重要です。
消耗期とは、治療により陽性症状が落ち着いてきた段階で、回復のために必要な時期。回復期になると心身ともに安定し、患者さんも活動への意欲が生まれてきます。

治療は薬物治療と医師やカウンセラーによる精神療法が基本です。これらの治療法を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
また、他の患者さんと一緒にレクリエーションなどを行うデイケアと呼ばれる集団療法で、人との関わりに慣れていくことも重要です。
薬物治療のメインとなるのは、脳の神経伝達物質の働きを調整する「抗精神病薬」ですが、不眠や抑うつなど、症状に合わせて「睡眠薬」や「抗うつ薬」を処方することもあります。
また、通院か入院かという治療方法を決める必要があります。入院治療の場合は、医師や看護師が常に患者さんと関わるため、その時の病状に合った治療を受けられます。職場、学校、家庭など日常生活のことが気になって治療に集中できない時は、その環境から離れることで身心ともにゆったりと休むことができ、落ち着いて治療が受けられるメリットがあります。
また、幻覚や妄想に振り回されて行動のコントロールができないような場合は、入院して積極的な治療をすることが必要です。
通院の場合は普段通りの生活を送りながら治療を進められるので、生活環境の変化が苦手な人にはよいでしょう。治療の方法は、患者さんの希望と症状をみながら、医師と相談してください

統合失調症の治療において、薬物治療はとても重要です。しかし、幻覚や妄想が強い急性期には、治療について冷静に考えられず、服薬ができないことがあります。また、安定してくると薬に頼りたくないという気持ちから服薬を中断する人が少なくありません。「薬の副作用は?いつまで飲まなければならないのか?薬を少なくしたい」など、薬への不安や疑問を感じるのは無理もないことです。しかし、自分で薬を調節したり中断することで、症状が再発するなどのデメリットも生じやすくなります。もし薬に関する不安や疑問があれば、主治医に相談してください。
こころの病の治療では、主治医と信頼関係を築くことが大切です。主治医に生活で困った問題を伝え、改善するヒントをもらうようにしましょう。
また、同時に家族や職場、友人の理解やサポートも大切です。こころの病は周囲に気付かれにくく、本人の苦しみが理解されづらい傾向があります。支えている人のなかには「こんなに協力しているのに」と、ストレスに感じてしまう場合もあります。悩みやストレスを抱え込みすぎると、サポートする人が疲れ、患者さんに罪悪感を持たせることになり、お互い逆効果になります。そんな時は、主治医に相談したり、家族会など同じ病気を抱える人たちの話し合いの会に参加したりするのも良いでしょう。
統合失調症は長期にわたる病気です。本人も周りもそのことを十分に理解し、互いに無理なく生活できる環境をみんなで考えていきましょう。

今回答えいただくのは
宮武 良輔(みやたけ りょうすけ) 先生
駿河台こころのクリニック 院長/医学博士/精神保健指定医/日本精神神経学会専門医
本ページの記事は湧永製薬発行情報誌“大元気 夏号”に好評掲載中です。
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