歯 肉 炎
歯肉炎とは
肉炎とは歯周病の初期段階の症状で、歯肉にのみ炎症が生じ、歯の周囲の組織、歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)や歯根膜(しこんまく)までは破壊されていない状態です。通常、歯肉は薄いピンク色で引き締まっていますが、細菌が入ると暗赤色になり、歯と歯の間の歯肉は丸みを帯びて腫れてきます。歯みがきのときや硬いものを食べると出血しやすくなるだけでなく、口臭の原因にもなります。
歯肉炎の状態を放置していると歯周炎になり、歯茎のみにとどまらず、歯槽骨にまで炎症が及びます。歯がぐらつき、膿が出るなど重度の歯周炎になると歯を失う可能性が高まります。虫歯に比べて軽視しがちな傾向にありますが、実は歯を失う最も大きな原因といえます。また歯槽膿漏も歯周病の一つです。
歯肉炎の段階では痛みがないため、なかなか症状に気付くことはできません。歯茎の腫れや出血があっても、多くの人が「問題はない」と放置してしまうのです。
歯肉炎の原因
口の中には口腔常在菌という細菌が棲んでいます。口腔常在菌は、腸内や皮膚にいる常在菌と同様に、通常は病原性を発揮しない状態でバランスがとられていますが、ブラッシングが不十分だったりすると、細菌が増殖しネバネバした物質を作り出して歯の表面に付着します。これが歯垢(プラーク)、歯肉炎の原因です。
1mgのプラークの中には10億個の細菌が棲みついているといわれています。プラークは食後数時間で形成され、2、3日放置されることにより毒素を出し虫歯や歯肉炎などを引き起こします。また唾液中のミネラルと混ざりあって石のように硬い歯石になると、ブラッシングなどでは取り除くことは困難に。さらに歯石には歯垢が付着しやすいため、悪循環に陥り、症状が進行していきます。また歯肉が炎症によって腫れ上がると、歯と歯肉の間に隙間(歯周ポケット)ができ、この隙間にまた細菌が入り込んでしまうのです。
歯肉炎の治療法
プラークは、しっかり歯磨きをすれば除去することができます。そのため、軽度の歯肉炎であれば、ブラッシングなどのセルフケアで治療可能です。ただし、自己判断で歯肉炎だと決めつけてしまうのは危険です。見えない所にプラークが溜まり、セルフケアでは治療できないほど歯肉炎が進行している可能性も十分に考えられます。「もしかして、歯肉炎かな」と思ったら、まずは歯医者さんへ。
歯医者さんでプラークや歯石を除去し、歯磨きの指導をしてもらうことで、歯肉炎の再発予防にもなります。また歯肉炎に効く薬をマウスピースの中に入れて、直接歯茎に浸透させる治療法もあります。歯周炎になると、抗生物質などの薬を処方、フラップ手術という歯周ポケットの奥深くまで入り込んだ歯石やプラークを取り除く方法で治療をしていきます。症状が悪化して取り返しのつかない事態になる前に、まずは検診を受けるようにしましょう。
歯肉炎を防ぐためのブラッシング
プラークを効率よく除去するために重要なブラッシングですが、まず歯ブラシは毛先が細くある程度の硬さがあるものが良いでしょう。毛先の開いた歯ブラシは交換してください。歯肉炎を防ぐために、ブラッシングの際は歯の根元を集中的に磨きます。歯ブラシを歯と歯肉の境目に沿うように 45度に当てて小刻みに動かしながら、1本ずつ磨くようにしましょう。最後に前歯の裏側は1本ずつ縦に当てて汚れをかきだすようにします。また歯と歯の隙間などは歯間ブラシを使って磨くのも効果的です。
自分で綺麗に磨けていると思っていても、汚れやプラークを完全に落とすことは難しいです。そのため、歯医者さんで定期的に歯のメンテナンスを行うと良いでしょう。3ヶ月に1回ぐらいの頻度で受けることで、歯肉炎だけでなく虫歯などの早期発見につながります。

今回答えいただくのは
浅野 和正(あさの かずまさ)先生
あさの歯科クリニック院長/歯学博士、ドライマウス研究会認定医。日本歯科保存学会、日本歯周病学会、日本口腔外科学会などに所属
本ページの記事は湧永製薬発行情報誌“大元気 秋号”に好評掲載中です。
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