突然ですが、「ツルニンジン」をご存知ですか。
ツルニンジンは、朝鮮王朝時代の宮廷を舞台とした有名なTVドラマ「チャングムの誓い」にもと きどき登場していましたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここで、第21話の場面をご紹介させてください。
最高尚宮(チェゴサングン)の地位をかけたハン尚宮とチェ尚宮による「王と皇太后に捧げる料理」の最終決戦。
それは、チャングムが幼い頃、瀕死の母親に食べさせた最期の食材「野いちご」の砂糖漬けでハン尚宮が勝利したというデザート対決での場面。
対するチェ尚宮が捧げた逸品に皇太后が「すばらしい!」と絶賛したのですが、そのデザート「ソプサンサム」こそ、実は「ツルニンジン」の揚げ菓子だったのです。

では、そのツルニンジンについてお話しします。
ツルニンジン(学名:Codonopsis lanceolata)は、茎がツルになり、
根が高麗ニンジンに類似していることから、
その名がついたキキョウ科(Campanulaceae)のツル性多年草で、
韓国、日本、中国などに分布しています。(写真:花と根)
日本でツルニンジンを食べる習慣はありませんが、
韓国では高級食材として現代でも食されています。ドラマの中で、一般の庶民は茎も食べていたようでした。

韓国では、古くより健康に良い食材として用いられてきたツルニンジンは、
別名「羊乳(ヨウニュウ)」ともいわれ、茎を切ると出てくる白い乳液のような汁も健康に良いといわれています。
そしてツルニンジンは、その形状が高麗ニンジンに似た「羊乳」の根ということから「羊乳参(ヨウニュウジン)」とも呼ぶそうです。
ちなみに、中国の「中華本草」には「山海螺(サンカイラ)」の名前で収載されています。
自生のものは徐々に少なくなり、韓国では食用目的に栽培が行われています。

さて、類縁する植物にキキョウ(学名:Platycodon grandiflorum)やヒカゲツルニンジン(学名:Codonopsis pilosula)があります。
湧永製薬はツルニンジンに、これらの植物には認められない活性を持つ事を発見しました。

そして、この活性を担う成分がランセマサイドA(Lancemaside A)というサポニンであることも新たに発見しました。
この成分は、キキョウやヒカゲツルニンジンになく、日本産のツルニンジンにもほとんど含まれておらず、韓国産のツルニンジンに特徴的な有用成分と期待されています。

種の違いによる成分の違いは当然ともいえますが、産地によって有用成分に大きな違いがあることは驚くべきことです。
また、別の特徴的成分も単離し、その構造を決定しました。
その成分はタンジェノサイドI(Tangshenoside I)といい、フェニルプロパノイドの仲間でした。

これらの研究成果は、第126年会日本薬学会(2006年3月・仙台)で発表した際、約3600演題の中から学会ハイライト集にも掲載され、大きな話題を呼びました。

山道を歩くとき、そっと道端の野草に目を向けてみてはいかがですか。日本国内でも山野に自生するツルニンジンの可愛いらしい花を見つけることができるかもしれません。
でも、ひとつお願いです。野生のツルニンジンは希少になっていますので、どうか温かく見守ってあげてください。

(学術部 今田 修)