尿のトラブル
高齢者になるとトイレが近くなるのはなぜですか?
若い人に比べて、年齢を重ねることにより膀胱の尿をためる機能が特に衰えてきます。そのため、前回トイレに行ってからそれほどたっていないのに急にまた行きたくなる (尿意切迫感)感じがしたり、尿がもれてしまったり(切迫性尿失禁)することがあります。また、特に夜間寝ている時に尿がたくさん作られる(夜間多尿症)ことにより、夜の尿の回数が増えてしまいます。
尿の病気を教えてください。
中高年以上の方に多いのは、急におしっこをしたくなり、我慢できないという症状。これを「尿意切迫感」といい、トイレまで我慢できずに尿がもれてしまうことを「切迫性尿失禁」といいます。
健康な膀胱は、おしっこをしっかりとため、たまったらトイレでしっかりと収縮して排出をするのですが、膀胱が過敏になってしまい、トイレでもないのに勝手に収縮して尿を押し出そうとすることを「過活動膀胱」といいます。脳梗塞など脳や脊髄の疾患で起こることもありますが、特に原因がなくても加齢によって男女ともに起こる人が多い病気です。
男性では、若いころに比べて尿の勢いがない、残尿感を感じるという方も多く、こちらの主な原因は前立腺が大きくなる「前立腺肥大症」という病気です。男性の尿道は前立腺の中を通っているので、前立腺が大きくなるにつれ尿道が圧迫され、おしっこが出づらくなります。そうすることで膀胱に負担がかかり、先ほどの過活動膀胱につながることもあります。
夜中にトイレに起きるため寝不足です。何かいい方法を教えてください。
就寝中におしっこに2回以上いくことを夜間頻尿といいます。中高年に多く、トイレのたびに眠りを妨げられ、それが毎日、2回、3回ともなれば寝不足になるのも当然です。
お年寄りが夜間にトイレに行く際に転んでしまい、それが原因で大腿骨などを骨折し、寝たきりになるという人もいます。また、睡眠不足が日中の仕事や家事に影響し、効率が悪くなるなど、夜間頻尿が続くとさまざまな問題が発生します。
夜間頻尿は膀胱の問題だけではなく、心臓、腎臓、睡眠の問題などいろいろな原因が考えられています。以前に比べて治療の方法も増えてきました。生活の質を下げるようなことがあれば、専門医に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
日常生活でできる夜間頻尿の予防法を教えてください。
夕食以降、水分を摂りすぎないようにしましょう。特にカフェインやアルコール、過度の飲水は夜間の排尿回数を増やします。あまり水分を摂っていないのに夜間頻尿が続く場合は、水分の多い食べ物を摂っていることが多いです。 生野菜や果物を食べ過ぎないこと、汁物(スープやお味噌汁)を控えるなども効果的です。
食事の塩分にも気をつけてください。塩分を摂りすぎるとのどが渇いて水分の摂りすぎにつながり、尿量が増えることになります。
また、足がむくんでいると横になったときに水分が血管内に移動して、腎臓から余分な水分を出そうとして尿が作られます。昼間のうちに足をあげて軽く横になると、日中のうちに水分の排出を促すことができます。 着圧靴下を履いて足のむくみをとったり、夕方に軽く散歩して足のむくみを解消するのも効果的。ストレス解消になりますし、運動したことで安眠につながります。
尿のトラブルは誰にでも起こります。気になることがあれば、専門医に相談しましょう。
今回お答えいただくのは
小内 友紀子 先生
ときわ会常磐病院/医師、医学博士/日本泌尿器科学会専門医、指導医/日本透析医学会認定医、指導医/日本排尿機能学会認定医