
フレイル予防のために筋肉をつけよう
人の筋肉は20代がピークで、あとは徐々に細く小さくなっていき 40代以降、年1%程度の割合で減少してしまいます。
加齢により筋肉量が減少したり、筋力が低下したりする状態を「サルコペニア」といい、サルコペニアになると、ささいなことで転んで骨折したり、疲れやすくなって動けなくなったりすることから、筋肉量の減少を加速させてしまいます。
サルコペニアは「フレイル」の大きな原因につながります。フレイルとは、虚弱や老衰などを意味する英語Frailtyを語源とした言葉で、加齢により心身が衰えた状態を意味します。フレイルになると活動量が減ってサルコペニアが進み、ますます衰えるという悪循環になります。
フレイルが進んでからでは、運動することは難しくなるので、筋肉をつけてサルコペニアを防いでいくことがとても重要になります。
筋肉はいくつになっても増える
健康のために筋肉が必要だとわかっても、高齢になると「今さら無理だ」とあきらめてしまう人が多くいます。しかし、高齢になっても、運動習慣がなくても、トレーニングを行うことで筋肉はつきます。実際に、要介護の高齢者でも週に2回、各1時間程度の運動を継続した結果、1年で筋肉が5.5g増加したという報告もあります。
高齢になると筋肉を新たに生み出す力は低下するため、若い人と比べると筋肉がつくスピードはゆるやかです。しかし、何もしなければ減っていく筋肉をトレーニングで少しずつ増やすことができるのですから、絶対にやるべきでしょう。転倒による骨折を防ぐためにも、筋肉というクッションで骨をカバーすることが大切です。
老化防止のために下半身を鍛えよう
今回は太もも、お尻、大腰筋をしっかり鍛えられるスクワットを紹介します。スクワットでは、それらの筋肉に加えて、ふくらはぎの筋肉も刺激できます。ふくらはぎは心臓に血液を戻すポンプの役割を担っているため、同時に強化していきます。
筋肉の材料となるたんぱく質を摂取しよう
筋肉の8割がたんぱく質からつくられるので、積極的にたんぱく質をとりましょう。フレイルやサルコペニアを予防するために必要なたんぱく質の量は、65歳以上の人でも1日に体重1㎏当たり1gのたんぱく質を摂取することが推奨されています。体重50kgの人であれば、1日50gです。
たんぱく質が多い食材として思い浮かぶのは肉や魚ですが、食材ごとにたんぱく質の量が異なるため、これらの食材を50gとればいいということではありません。とはいえ、食材ごとのたんぱく質の量を覚えるのは大変です。そこでおすすめなのが、「手ばかり法」です。肉・魚などの高たんぱく質食材は手のひらサイズをとると20g程度になります。これを1食当たりのたんぱく質の目安とするのです。
高齢になると肉の摂取量が減るなどして、たんぱく質が不足しがちです、3食でたんぱく質の量が足りているか意識して食事しましょう。

今回お話を伺ったのは
久野譜也 さん
筑波大学大学院人間総合科学学術院教授。医学博士。