歩くと痛い!足の病気
50 歳を超えると多くなる「足」と「脚」のトラブルについて、専門医にお話を伺います。
年齢を重ねると、足も身体と同様に老化していきます。足は長年、私たちの体重を支え、歩くたびに体重の約2~3倍の負荷がかかり、酷使されています。この日々の酷使と加齢により、足のあちこちに不調が出るのが、 50 歳前後です。足の痛みやしびれなどが起きたり、外反母趾(がいはんぼし)や足底腱膜炎(そくていけんまくえん)などの病気の原因にもなります。
中高年に多い「外反母趾」
中高年に多い足のトラブルのひとつが、外反母趾です。足の親指が人さし指のほうに“くの字”のように曲がってしまった状態のこと。最初は変形した関節が痛み出し、徐々に出っ張った骨の部分が靴などにあたり、痛みが出ます。外反母趾角が 20 ~ 30 度なら軽度、 30 ~ 40 度以上は重度となり、歩行時に親指が使われにくくなり、歩行の機能が落ちます。
外反母趾は、先の細い靴、幅の狭い靴、足に合わない靴を長年履き続けると、親指のつけ根から先が圧迫されて変形することが大きな原因です。また、扁平足になると足が横に広がるため、靴で圧迫されて外反母趾になることもあります。
対策としては、足のアーチを整えるインソールを作る、痛みがひどい場合は鎮痛剤を服用する、親指から小指のつけ根に包帯を巻いて変形を抑える、外科手術などさまざまあります。放置せず、早めに専門医に相談しましょう。
軟骨がすり減る「変形性股関節症」
次に多いのは、脚のつけ根が痛む「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」です。最初は立ち上がりや歩きはじめに脚のつけ根に痛みを感じ、進行すると痛みが強くなったり、常に痛むようになり、長時間立ったり、歩くことが辛くなります。原因は、股関節の形成不全など子どもの頃の病気などが全体の 80 %といわれていますが、加齢により軟骨がすり減り、股関節の動きが障害を受けることもあります。
診断されたら、負担を減らすことが大切になります。そのうえで痛みを緩和するために消炎鎮痛剤を使ったり、運動療法を中心とした保存療法も行います。生活面では、筋肉バランスや姿勢の改善、適正体重のための食事療法も効果があります。これらの保存療法でも症状が取れない場合は外科手術を考えます。関節の変形がすすんでいる場合は人工股関節手術の適用となります。
足の裏が痛い!「足底腱膜炎」
また、足の裏に違和感や痛みを感じる人に多いのが、「足底腱膜炎」です。足裏のつま先からかかとに扇状に走る足底腱膜が炎症を起こす病気です。アーチが沈み込んで足底腱膜が伸びるときに引っぱられて痛みを感じたり、かかとをつくときに痛い場合があり、起床時に一歩踏み出すときなどにも痛みが生じがちです。
原因は、加齢によって足底腱膜が硬くなることで起きやすく、他にも長時間歩き続ける、立ち続けること、過度なジョギングで負担がかかっていることなどがあります。また、扁平足や外反母趾など足に変形があることでも起こります。
整形外科では、インソールや運動療法などで治療をしますが、同時に家でできる足裏マッサージなども効果的です。
今回お答えいただくのは
菊池 守 先生
“足病医療の総合病院”「下北沢病院」院長。日本形成外科学会認定・形成外科専門医。