筋肉を保てば健康寿命は延びる!
“元気に長生き”のカギは筋肉にあり
「いつまでも自分の足で歩きたい」「好きなことを楽しみながら暮らしたい」――。そんな〝健康長寿〟を支える大きなポイントが、「筋肉」です。
日本人の平均寿命は、男性81.74歳、女性87.57歳(2021年)と延び続けています。一方、介護を受けずに自立した生活を送れる「健康寿命」は、男性72.68歳、女性75.38歳(2019年)です。
つまり、男性は約9年、女性は約 12年もの間、日常生活に制限のある状態で過ごしていることになります。できるだけ長く元気に過ごすために、今あらためて注目されているのが「筋肉を維持すること」です。
筋肉量が低下すると、転倒や骨折のリスクが高まるだけでなく、糖尿病などの生活習慣病にもつながりやすくなります。また、喉の筋肉が弱くなると、食べ物を飲み込む力である嚥下機能が低下。本来食道に送り込まなければいけない食べ物が、間違って気管に入ってしまう誤嚥性肺炎のリスクも高まります。さらに近年は、筋肉量が多い人ほど寿命が長い傾向があることもわかってきました。
筋肉は生活必需品です。だからこそ、〝今のうちから〟意識して維持することが大切なのです。

全身の健康を支える「筋肉」の重要な働き
筋肉には、「体を動かす」以外にも、健康維持に欠かせないさまざまな役割があります。
❶姿勢を保ち、体を支える
骨と筋肉が支え合うことで、立つ・歩く・座るといった動作がスムーズに行えます。筋力が低下すると、転びやすさにもつながります。
❷血流をサポートする
筋肉はポンプのように働き、血液を心臓へ押し戻しています。特にふくらはぎは〝第二の心臓〟とも呼ばれています。
❸衝撃から内臓や骨を守る
筋肉はクッションの役割を果たし、外からの衝撃から体を守っています。
❹体温を保つ
体でつくられる熱の約6割は筋肉によるもの。筋肉量が減ると基礎代謝も低下し、冷えやすくなります。
❺免疫力を支える
筋肉には、免疫細胞を活性化するために必要なアミノ酸が蓄えられています。
❻水分を蓄える
筋肉は体内最大の〝水分タンク〟です。高齢者が熱中症になりやすい背景には、筋肉量の低下も関係しています。
❼健康維持に役立つ物質を分泌する
筋肉は「マイオカイン」と呼ばれる生理活性物質を分泌し、全身の健康維持に関わっています。
筋肉は何歳からでも増やすことができる!
筋肉は、何もしなければ年に約1%ずつ減っていくといわれています。その結果、「サルコペニア」と呼ばれる筋肉量や身体機能の低下が起こりやすくなります。しかし、筋肉はいくつになっても鍛えることができます。90代から運動を始め、筋肉量が増えたという報告もあるほどです。
おすすめは、下半身全体を効率よく鍛えられるスクワットです。まずは週3回、2〜3週間続けることを目標にしてみましょう。続けるうちに、「立ち上がるのがラクになった」「歩きやすくなった」と感じる人も少なくありません。
アメリカの研究では、日常活動によって高齢女性の心臓病リスクが軽減できるという結果も出ています。掃除や買い物、ガーデニングや趣味での活動など、普通の日常動作でも1日4時間以上行っている女性は2時間未満の女性よりも心血管系疾患リスクや冠動脈疾患リスクが 43%、脳卒中リスクが 30%低かったのです。
生活の中で意識的に動くようにするだけで筋肉が使われて血液循環がよくなり、体を元気にしてくれるのです。健康寿命を延ばすために、筋肉づくりは今日から始められる大切な習慣です。

今回お答えいただくのは
久野譜也 さん
筑波大学大学院人間総合科学学術院教授。医学博士。


